朴思柔と生徒の出会い描いたドキュメント:新しい時代に同胞つながるきっかけになれば
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映画通じてつながる出演者と観客
金淑子映画の中で一番印象に残っているシーン、または中の印象的なエピソードは?
朴朴思柔と朴敦史の二人が監督ということになっていますが、この映画の本質的なところは大阪のラグビー部の子たちと韓国から来た朴思柔の出会いの記録だということにあるとずっと思っていました。そうでないと成立しない作品だと思います。最初は運動場でサッカーボールが朴思柔の頭に当たった場面とか、全国大会中に脳しんとうで出場できなくなったユインが朴思柔にベンチコートを貸すというシーンなどはなかったのです。あくまでラグビー部の一年間の戦いの記録として、まず撮影者の姿はなしにして作りました。でも何か物足りない。ドキュメンタリー映画では、どうして撮ったのか? どう関わったのか?という、撮影者の個人的な手触りがすごく大事だと思っています。それが伝わってこなかったのです。ラグビー部の生徒たちの活躍はすごいのですが、何かが抜けていると。撮影期間中、朴思柔のラグビー部の子どもたちへの愛情というか、今日はガンテがこんなことを言ったとか、あの子たちがこんなすごいことをやったとか、呉英吉先生がこんなことをおっしゃったとか、メールや電話ですごくたくさん話してくれていたのですね。僕はほとんど遠征などについて行っていませんし、一緒に継続して撮るようになったのは映画になった一年間の後半以降からです。アボジ、オモニ以上に過剰な朴思柔の思いというか、アボジ、オモニ以上の親目線というか、それこそが決定的なものではないかなと思って、そういう手触りの感じられるシーンを意図的に加えました。最初のウトロのシーンとか、なぜ大阪朝高ラグビー部を撮るようになったのかというシーンは、後から入れ込んでいったのです。すると、彼らと朴思柔の出会った過程がそのまま浮き上がってきて視点が定まったのです。朴思柔の感覚や思いがちょっと不器用な形かもしれないのですが見えてきたのです。長い間、ウリハッキョのトンムたちと韓国から来た映画監督が出会うというのは、ありえなかったことでした。それを実現した趙恩聆(チョウ ウンリョン)監督、金明俊(キム ミョンジュン)監督、映画「ウリハッキョ」、そして朴思柔という存在と、ウリハッキョを巡る時代の変化、心ある同胞の方々、と幸運ないろんな導きがひとつの形に結びつきました。
金反響はどうですか?
朴これだけ個人的な映画もないと思います。朴思柔がいろんなことをどんどん飛び越えて行って、そこに行ってそこでじっと見つめた、そんな個人的な映画なのに、日本でもそうですし、韓国でもその視点を通じてみた人たちがどんどんウリハッキョを好きになってくれている。ガンテはこんな子で、ユインはこんな子で、サンヒョンはこんな子でという顔の見える関係としてすごく親しみを感じてくれている。そういう反応が一番驚きです。韓国では、ウリハッキョを全然知らない人たち、「フィクションだと思って観に来た」というような人たちまで観て、ウリハッキョの存在にびっくりして帰ったり、フェイスブックとかカカオトークとかで出演していた生徒たちを探して友達申請して、ウリマルでつながったりしている。中には一人で韓国から来て、大阪朝高に突然お邪魔して、運動会の練習などを見せてもらった後、サンヒョンが勤めている焼肉屋に行った人もいる。ウリハッキョと朴思柔が出会ったように、新しい時代の同胞同士のつながりのきっかけ、共通項になってゆくのではないかなと思うような反応が一番嬉しいです。
映画界が不況と言われる中で、ドキュメンタリー映画で一万人観客が入ったらすごいことだと言われています。ところが「60万回」は一万五千人が入っていますし、韓国では二万人を超えました。それは映画を観た人一人ひとりにも誇りに思ってもらえることなのじゃないかなと思います。ウリハッキョを後押しするたくさんの人たちがこんなにいるということを、もっと強調してゆきたいです。ハッセンや学父母たちがあらためてウリハッキョに行っていてよかったとか、しんどいけどソンセンニムやっていてよかったとか、映画を見て子どもさんをウリハッキョに行かせようかと思ってもらえたらそれが何よりです。
金これからの予定は?
朴今年は自主上映会がメインになってくると思います。今までの劇場公開では、いわゆる映画好きのウリハッキョとは関連の無かった人たちへの広まりもあったのですが、これからはもっと広くジワっと浸透させる意味で、ウリハッキョや日本の学校での地域の小さな上映会を通じて、もっとお見せできるようにしていきます。六〇万人を目指しての上映運動です。
金次作は?
朴それもまた何かの導きで、いつか形になってゆくかもしれません。もしかしたら一〇年くらいかかるかもしれません。当面は上映と記録活動を続けていきます。朴思柔と二人、コマプレスとして伝えられることは何でもやっていくつもりです。
*インタビュー記事の中の7、11、27、29、33、39、44頁の写真は、コマプレス提供
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