「アメリカ」と「日本の中の朝鮮」が初めて会う
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チョン・キヨル
朝鮮大学校客員教授、The 21st Century(21世紀)発行人
*ソウル発「自主時報」2019・2・2からの抜粋、見出しは原文のまま。
もくじ
「米国」と「日本の中の朝鮮」の出会い
「日本の中の朝鮮」という表現は、朝鮮大学校を訪れたアメリカのトゥポ大(DePauw University)学生たちがとっている教育学部講義の題名だ。題名の後に「植民主義と教育」という副題が付いている。男女一四人(三学年一一、四学年三/白人一二、黒人一、母親がコリアンで、父親が白人の女子学生一)の大学生を引率した三〇代半ばの白人教授のデリック・フォード博士が開設した講義だ。彼の朝大訪問は今回が初めてではない。二〇一六年一一月、朝鮮大学校60周年記念学術大会の時、米国側の発表者として参加した。その時、彼が発表した論文は「世界史的見地からみた海外コリアンの民族教育と朝鮮大学校:植民主義に対する抵抗としての民族教育」(Korean Education for Overseas Koreans and Korea University from the Perspective of World:Korean Education as Resistance to Colonialism)だ。二〇一六年に朝大訪問後、彼は北朝鮮訪問を希望した。「21世紀研究院」は翌年八月、彼と彼の友人四人による「朝鮮学習観光」(Korea Study Tour)を組織した。そして昨年初、フォード教授は「21世紀研究院」の副院長の一人として研究院事業に合流した。
旅行直後、私たちはトゥポ大―朝鮮大が参加する「国際学生交流プログラム」(Int’l Student Exchange Program:ISEP)を一緒に企画した。昨年一月、両大学で公式許可が下りた。その後、一年の準備を経て、一六人(教授二人含む)のアメリカ大学生代表団の初の朝鮮大学校訪問が実現した。 訪問二日目、フォード教授はトゥポ大と朝鮮大学生を対象に特別講義を行った。講義の題名は「The US-DPRK Relationship and the Fracturing of Unipolar Imperialism:Past、Present and Future」(朝米関係と一極帝国主義の崩壊:過去、今日、未来)だ。特講は「21世紀研究院」機関紙兼独立英文媒体である「The 21stCentury」(21cir.com)に載った。朝鮮大学校側でも外国語学部教授の英語による講義が行われた。講義内容は「在日本朝鮮人史と民族教育運動」だ。
初日、アメリカの大学生は博物館見学、学生、教職員と共に昼食、講義、自由対話、朝鮮舞踊の練習参観、舞踊学習と統一列車、風物(民族打楽器演奏、ここでは「セマチ」と呼ぶ)公演練習の参観、風物体験、そして夕方、歓迎晩餐が大学食堂で催された。
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「人生観が変わる経験」(Life-changing Experience):「横須賀海軍基地地下トンネル」、「強制徴用」、「植民地奴隷労働」
滞在三日目、朝から在日本朝鮮人の「強制徴用奴隷労働」の現場の訪問が始まった。
感想文に紹介されたように、地下トンネル現場訪問がアメリカの学生たちに与えた衝撃は小さくなかった。日帝が戦争末期、強制徴用で引っ張って来た朝鮮人労働者を動員して、建築した横須賀海軍基地地下トンネルに直接入った学生たちの「日本の中の朝鮮」に対する学習はその時から深刻化し始めたようだ。学生たちの考えが急成長し、変わり始めたのはまさにその時点だったようだ。
彼らの「日本の中の朝鮮」学習は五日目の夕方、風がとても冷たかった日本の文科省前での「高校無償化金曜闘争」に参加することによって、脳裏に深く刻まれ始めたに違いない。その日の夜、彼らは皆大泣きした。
朝鮮大学の卒業生が経営する焼肉屋「オンドル」で開かれた晩餐会の時だ。一四人の学生ほとんどが喉を詰まらせ、話をつづけることができなかった。二日後の午後「日本の中の朝鮮」に対する学習をすべて終えた彼らは全員無事にアメリカに戻った。数日後、彼ら全員が熱い「感想文」を送ってきた。教授も貴重な論文を発表した。学生たちの文の中の「人生観が変わる経験」という表現が目についた。
感想文の内容を短く要約する。
「来る前の予想をはるかに越えた、限りない学習の連続だった。短い五~六日、こうも多くのことを学ぶとは想像できなかった、『在日本朝鮮人運動、民族教育運動』が何かを初めて知ることになった、朝鮮に対する日帝の半世紀の植民支配が何を意味するのか悟った、朝鮮人にとって統一が何か初めて知るようになった、コリアの統一を支持する、私もあなた方と共にコリア統一のために戦う、今回の旅行を一生忘れないだろう、『人生観が変わる経験』をした」
等だ。
大学生の訪問期間中、朝鮮大学から二〇~三〇人余りの学生が行事全期間交代で参加した。より多くの学生たちが参加できるようにとの大学側の配慮だ。言葉の問題で、参加は外国語学部英語専攻の学生たちが選定対象になった。二日目、トゥポ大朝大教授の英語共通講義の参加は、制限しなかった。望む学生は誰でも参加できた。その講義に一〇〇人を超える朝大生が参加した。反応も熱かった。朝大側もアメリカの学生たちも驚いた。外国語学部英語専攻学生たちも行事に誰が参加するかをめぐって選定しなくてはならなかったと言う。参加要求が高かったからだ。行事に対する反応は学生、教授を問わず熱かった。何より学生たちの反応に驚いた。彼らは皆すぐに「友達」になった。あたかも数十年つきあった友人のようになった。一週間、みんなそんな風に送った。すぐに一つになった。北と同じように「日本の中の朝鮮」でもアメリカは「帝国主義の敵」だ。北式にいうと、「不倶戴天の敵」だ。一方、アメリカにとって「朝鮮」は一生「悪魔」だ。七〇年「悪魔化宣伝」がつくりだした悪魔だ。互いに一生「敵」で、「悪魔」だと思って生きてきた。それでお互いを知る機会がなかった。会う機会もなかった。もちろん彼らだけでない。世の中全体がそうだった。南の同胞も大きな違いはない。私たちも知らなかった。私たちも知らなかったのだから、他は言うまでもない。 互いに一生「敵」、「悪魔」だと思って生きてきた彼らは、しかし会うやいなや「友達」になった。瞬間に! だ。「作られた悪魔」は本当に一瞬にして消えた。砂上の城のように崩れた。「帝国主義の敵」も心と心が向かい合うと、お互いの気持ちが通じてすぐ「同志」になった。彼らが習ったウリマル(朝鮮語)の中の一つが「同志」だ。「祝杯」という言葉も習った。初めから最後まで彼らが叫んだウリマルは「祝杯、同志」だった。
「21世紀研究院」初の「国際学生交流プログラム」(ISEP)の成果と意義、展望
訪問を終えてフォード教授が提案した。朝大側が受けいれるならばトゥポ大は来年も同じプログラムを進めるということだ。研究院側に来年再び同じプログラムを朝大とともに組織することを希望した。朝大にそのような意を伝えた。朝大もトゥポ大と同じ反応を示した。トゥポ大がまた来るならばさらに熱く歓迎するという意を知らせてきた。今回の初めての国際学生交流プログラム事業成果がお互いの胸の中に深く刻まれた結果だと信じる。行事の後、両大学ともに、今回の事業を発起して組織した「21世紀研究院」側に謝意を表した。研究院は今回の事業で得た収益金を大学に寄贈した。
研究院が今回の事業を企画して推進した目的は下記のとおりだ。
- トゥポ大のフォード教授の講義の題名のように「日本の中の朝鮮」を世の中に正しく知らせる。
- 世の中が全く知らなかった在日本朝鮮人の七〇年にわたる民族教育運動と祖国統一運動を世の中に広く知らしめる。
- 「日本の中の朝鮮」は日本当局が解放以後も朝鮮人(総連同胞)に加えつづけた植民地時代の民族差別政策と政治、経済、社会、教育、文化、法的問題など、あらゆる形態の弾圧と政治社会経済文化的権利剥奪、制約、差別、制裁が七〇年以上加えられる中でも強く勝ち抜き、美しく咲いた一輪の白色の「木蓮花」のような存在という事実を世の中に広く知らしめる(木蓮花は朝鮮大学校の「花」)。
- 在日本朝鮮人に対する歴代日本当局のあらゆる政治経済社会文化歴史的次元の差別、抑圧、弾圧問題の中でも「朝鮮学生たちを高校無償化プログラムから唯一除外している」日本当局の卑劣な処置を世の中に広く知らしめる。
- 在日本朝鮮人を相手に七〇年以上日本当局が行っている「国家次元の人権犯罪、人種犯罪」が世の中に徹底的に隠されている事実を世の中に広く知らしめる。
- 言い換えるならば、七〇年以上在日本朝鮮人が処している「最悪の人権問題」が世の中に徹底的に隠されている現実を世の中に広く知らしめる。
- 安倍が公言している「総連組織と在日本朝鮮人の民族教育を抹殺」するための卑劣で悪辣な民族差別政策により全国の数多くの朝鮮学校が、一層大きい財政危機、廃校危機に追い込まれている現実を世の中に広く知らしめる。
- 最後に「朝鮮(私たちの)学校興し運動」に、私たち民族はもちろん国際社会、特にアメリカ、ヨーロッパの人々も参加することができるように「在日本朝鮮人問題」を英語圏の国際社会に広く知らしめる。
「教授、私たちがアメリカで習ったことは、もしかすると全部偽りではないのですか?」
アメリカの学生たちが行事期間中、私たち教授を訪ねてきて吐露した告白の中で、最も記憶に残るのは「私たちがその間学び知ったことの全てがもしかしたら偽りではないのか?」であった。一、二年生だけがそのような問いを投げたのではない。二人の教授によれば、ほとんどすべての学生たちが同じ内容の告白をしたというのだ。南の言葉でいうならば、「참교육(正しい教育)」の重要性を再び実感した一週間だった。「誰がどのような内容で、どのような方向で、何の目的を持って、どのように後代たちを教育するのか?」という問題が、教育で決定的重要性を持つということを再び新しく実感した時間だった。
フォード教授が行事五日目の午前、朝鮮大学校の行事(英語競演大会)の時に、トゥポ大と朝鮮大学の学生の前で行なった、短い祝賀演説を紹介する。
「教員として最も充ち足りてうれしいことは、教える学生たちの考えと思考が育ち、深まるのをみることだ。今回の行事を通じて、自分が連れてきた学生たちのほとんど皆が、五~六日という短い期間に急成長して変わる姿を見て、深い感動を経験した。今回の交流プログラムが成果裏に進行されるように、あらゆることを自分自身のことのように手助けし、私たちを家族のように暖かく迎えてくれた朝鮮大学校と学生たち皆に深い謝意を表する」
「一三人の日本人拉致問題」と日帝強制占領期間「数百万の朝鮮人(拉致、徴用、徴兵、性奴隷など)犠牲者問題」(略)
結びの言葉
「米国と日本の中の朝鮮」の初めての出会いの全期間、ソウルの「KBS TV」の編集局の記者三人が朝大を訪問した。彼らは「在日本朝鮮人民族教育運動」全般を一年以上特別取材している。
同じ時期「KBS TV」の報道局も三人の記者たちを派遣し、朝鮮の小中級学校を中心に特別取材を行っていた。二つの記者団は私たちの行事も取材した。アメリカの学生たちと対談もした。アメリカの大学生の歴史的な初の朝大訪問の意味は、小さくないと考えたようだ。「KBS TV」に歪曲のない客観的記事を期待している。
まえがきで言及したように、これらすべてに隔世の感がある。きっと天地開闢だ。今週、東国大学から教授と博士課程生四人が朝大を訪問した。来週には北韓学教授一〇人余りが朝大を訪問するという。そうだ。朝米関係の構図が「対決」から「対話」に変わり、私たちの民族を七〇年間分けた、あらゆる分断の障壁が徐々に崩れつつある。世の中全てのものが徐々に変わっている。同時にこれまで七〇年の間、歴代日本当局が幕の裏側に詰め込んで、隠し続けた在日本朝鮮人に対する天人共怒する彼らの「植民地犯罪」また、今日、天下に徐々にあらわにされている。54
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