第四次産業革命を目前に教育の変化は喫緊の課題
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モーターとジャイロを組み込んだ膝の関節が動くロボットをブランコにのせて人工知能(AI)をつなぎ、ブランコの乗り方は教えないで、「振れ幅を大きくしろ」と設定する。最初はやみくもに動くので、うまく振れたり振れなかったりするが、たまたまある条件の時に膝を曲げて振れ幅が大きくなると、その実績を学んでいき、ついには人間と同じ漕ぎ方を学ぶ。さらに学習を続けさせると、膝を一周期に二回曲げるという、AIならではの奥義「二重伸縮」を編み出したという。
このブランコの漕ぎ方を学んだ「Hitachi AI Technology/H」が物流倉庫で、集品効率を八%向上することに成功した。物流倉庫の作業は、季節の移り変わり、売れ筋の変化、キャンペーン、特売などによって激しく上下する。そんな変化し続ける膨大な要因データをもとにAIは、人間が寝ている間に「一日の総作業時間を短縮」するための仮説を作って、作業に適用した結果だ。 (日立製作所のHPから)
最近では、世界最強といわれる韓国のプロ棋士・李世乭がグーグル・ディープマインドによって開発されたコンピュータ囲碁プログラムAlphaGoとの五番勝負で、一勝四敗して話題になった。人工知能を使って書いたショートショート四作品を文学賞・「星新一賞」に応募したところ、受賞はならなかったものの一部が一次選考を通過したというニュースも伝えられた。
ICT教育に関するインタビューで神奈川朝鮮中高級学校の金燦旭先生が言った「第四次産業革命」という言葉が心に残った。
産業革命というと、一八世紀から一九世紀にかけてイギリスで始まった蒸気機関や水力機関の開発による繊維業の飛躍的発展が頭に浮かぶ。これを機に農業や手工芸中心だった社会が工業化されていったと、遠い昔、歴史の時間に学んだ。これが第一次である。第二次は、二十世紀初頭、電力を使った労働集約型の大量生産方式、「フォード式生産方法」の導入だ。大量生産は庶民の文明化をもたらしたと言われている。第三次は第二次世界大戦以後の電子化による製品、生産設備システムの進化である。この進化によって日本は、一億総中流化の時代を迎えた。
そして一九九〇年頃からはパソコンが一般家庭に普及し、携帯電話やスマートフォンなどICT技術が庶民のものになった。ソーシャルネットワーク化も進んでいる。
第四次産業革命(「インダストリー4・0」)と言う概念は、二〇一〇年にドイツ政府が掲げた「ハイテク戦略2020」の中で紹介された一〇の「未来プロジェクト」の、アクションプランの一つとして初めて世に出た。目指すのは、インターネットなどの通信ネットワークを介して工場内外のモノやサービスを繋ぎ、AIを駆使したサイバーフィジカルシステム(CPS)技術を用いて、生産工程を最適化させる「考える工場(Smart Factory)」を実現すること。そして、さらにはこの考える工場と倉庫、流通経路、販売店など、関連施設すべてをネットワークで繋ぐことだ。工場はもはや製品を画一的に大量生産する場所ではなくなる。顧客のニーズの多様化を反映した特注品を、低コストの大量生産プロセスで実現する「マス・カスタマイゼーション」の時代が到来する。将来的には、企業や業態の枠組みを超えてネットワークを結び、ドイツ国内を「一つの大きな工場」に見立てるという構想を描いている。世界に先駆けて第四次産業革命を起こすことが、ドイツにとって必要不可欠な国家戦略だとし、産官学が一体となって、今後一〇年で実現するためのロードマップを作成している。
そんな中、日本の経済産業省政策局は一月、「第四次産業革命への対応の方向性 領域横断型の検討課題 人材・教育」で、「第四次産業革命を迎える社会においては、多様な知を結びつけながら新たな付加価値を創造していくことが求められる。このためには、文化的背景の異なる多様な人々と協働しながら、創造的に課題を発見・解決していくために必要な知識や能力、感性やリーダーシップ、チャレンジする意欲などをバランス良く育むことが必要であり、初等中等教育・高等教育ともに見直しの必要性に迫られている」と指摘した。
「米国の総雇用者の仕事の、四七%が一〇〜二〇年後には機械に代わられる」とも言われる大きな変化を前に、ウリハッキョの先生たちは、あげればきりがない厳しい条件のもとでチャレンジを続けている。彼らの努力を保護者はもちろん、同胞やウリハッキョを巡る一人一人が一緒に支えて行かなくてはいけない。
(金淑子・「記録する会」)36
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