朝鮮の歴史：高句麗

金昌成

編集部より・平壌の外国文出版社が昨年４月に刊行した｢朝鮮豆知識②－歴史｣(日文・83頁)からの転載。原文のまま、写真は整理者による。

12・高句麗はどんな国ですか？

高句麗は朝鮮史上最初の封建国家です。

高句麗は、古代国家の一つである句麗(卒本扶余)内で発生した封建的関係に基づいて建てられました。

早くから封建的関係が芽生えていた句麗では、新進封建勢力と古い奴隷主精力との間に抗争が生じていましたが、高朱蒙は新封建勢力に依拠して前二七七年、国家を建て、高句麗と号しました。

高句麗は現中国の◎河流域と東北部及び朝鮮半島の大部分を占める強大な国家へと発展しました。

高句麗の人たちは武芸をたっとび、侵略者の来襲には一致して戦い、祖国を守ることを当然の本分と見なしていました。

高句麗は紀元六六八年まで存在し、東方の千年強国としての威容を誇りました。

13・高朱蒙はどんな人物ですか？

高朱蒙は幼少の頃から知能に優れ、自製の弓矢で弓術に励み、百発百中の名射手として知られました。当時扶余では弓の名人を「朱蒙」と呼ぶ習わしがあり、人々は彼を朱蒙とたたえ、これが本名になりました。

扶余王の七人の息子は朱蒙の抜きんでた才能と武術を妬んで扶余王にざん言し、朱蒙を亡き者にしようと企みました。

朱蒙は志を同じくする友の烏伊、摩離、陜父らとはかって扶余を去り、追撃してくる兵を撃破し、南方の地へ向かいました。

句麗に至った彼は、当地で地盤を固め、句麗王の没後王位を譲られて国号を高句麗と改めました。

高句麗の始祖王高朱蒙は、後に、東明聖王と呼ばれました。

14・広開土王陵碑はどんな碑ですか？

広開土王陵碑は、高句麗第一九代広開土王の功績をたたえて四一四年に建てられた記念碑です。高さ六・三四メートルの陵碑には、高句麗始祖王の建国経緯、歴代王の継承問題とともに国の威力を誇示し、領域を拡大した広開土王の功績が年代別、事件別に叙述されています。

広開土王陵碑は朝鮮の金石文遺産の中で最も古いものの一つであり、碑文は東方の最も価値ある貴重な文化遺産の一つとされています。

15・安鶴宮址はどんな遺跡ですか？

安鶴宮址は平壌の大城山麓にある高句麗の王宮址です。

朝鮮半島南部の百済と新羅を統合して、民族統一の遠大な構想を実現すべく南下政策を推し進めた高句麗は、四二七年、民族の統一なより有利な地平平壌に遷都して王宮を造営しました。それが安鶴宮です。

安鶴宮は正方形の厚い城壁で囲まれ、城壁の一辺の長さは六二二メートル、全周二四八八メートル、敷地面積はおよそ三八万平方メートルに達しました。

大城山蘇文峰南側を流れる三つの小川をもって、一つは宮城内に池を作り、他の二つは東西城壁の外側を巡る堀としました。宮城内には大きな宮殿と回廊、それに人工的につくった美しい築山と池がありました。

16・大城山城はどんな遺跡ですか？

大城山城は高句麗の王宮安鶴宮城を守る防衛城で、周囲七〇七六メートル、城壁の長さは九二八四メートルです。

城内には数多くの糧食倉庫址、武器庫址、兵営址などがあります。

大城山城は天然の要害を利用した城で、攻めるに難し守るに易い城でした。

城壁は、大城山一帯の天然石を一定の四角錐形に加工して積み上げており、城壁の要所要所には雉(たかかぎ)を設けました。

大城山城内からは高句麗瓦、金銅仏像、経典を保管した石箱など、遺跡・遺物が少なからず出土しました。

17・平壌城はどんな城ですか？

安鶴宮と大城山城は強大な高句麗の首都としては完璧とは言えませんでした。

高句麗は以前の首都防衛上の教訓と強力な国力に依拠して、五五二～五八六年、現在の平壌市中心部に都市の全域を城壁で囲んだ平壌城を築きました。

平壌城は北方に錦繍山を控え東・西・南の三面が大同江と普通江に囲まれた有利な地帯にあり、その周りは約一六キロメートルに達しました。

平壌城は、山城と平城の長所を統合して築造された新しい首都城でした。

18・高句麗石刻天文図はどんな文化財ですか？

天文台を持ち、天文学者や専門観測者がいた高句麗では紀元前から日食、月食、流星、彗星などの運動を観測し、これらの資料を統合して石板に天文図を刻みました。

星座を石板に刻んだ高句麗石刻天文図は平壌城内にあったが、高句麗末の侵略者との戦いに際して、川に沈められてなくなってしまいました。しかし、原形通り製作された天文図が後世に発見され、さらにそれをもとにして『天象列次分野之図』が新作されました。この天文図は、中央の大きな円内に星座図があり、周りに各種の数表や説明文があります。

北極を中心とする天球を平面に投影し、二八二の星座に一四六七の星を表示し、春分点と秋分点の位置、二八宿の基準星の座標、それに赤道円、黄道円、北極円と経度円などが明示されており、銀河も描かれています。

高句麗石刻天文図はその内容が極めて正確な恒星表であり、世界的に非常に古い天文図です。

19・明臨答夫はどんな人物ですか？

高句麗には名将の誉れが高い宰相、明臨答夫(六七～一七九)という名の人物がいました。

彼は一〇〇歳の年に初代国相に任命され、首都と地方の軍事関係の事務を総轄しました。

一七二年、漢の大群が襲来するや、明臨答夫は一〇五歳の高齢でしたが、高句麗軍を陣頭指揮し、侵略軍に甚大な打撃を与え大勝利を博しました。

彼は一一二歳に世を去りました。

20・薩水の大勝はどんな戦いですか？

五九八年の第一次高句麗侵略戦争で惨敗した隋の煬帝は六一二年、大兵力をもって再び高句麗を侵略しました。

高句麗の乙支文徳将軍は、談判の名で単身敵陣に乗り込み、敵情を探ったあと、隋軍を国内深く誘い入れて殲滅する作戦を立てました。

乙支文徳の誘導戦術で長距離行軍を行った隋軍は高句麗の副首都鳳凰城付近に迫りましたが、疲労困憊し、食糧難まで重なって堅固な城を攻撃する気力をなくしていました。

乙支文徳将軍は敵将を嘲弄する詩を送り、侵略軍の士気を挫くとともに、退去の口実をつけてやりました。侵略軍が退却し薩水(哨子河)を渡り始めるや、待ち構えていた高句麗軍はその前後から猛攻撃を加えました。三〇万五〇〇〇名の薩軍のうち160余キロメートル離れた遼東城下までたどり着いたものは二七〇〇名にすぎませんでした。

この戦勝を、史上、「薩水の大勝」と呼んでいます。

21・淵蓋蘇文はどんな人物ですか？

淵蓋蘇文は幼少の頃から武術と兵法の習得に励んだ、精悍な風貌の持ち主でした。

彼は高句麗の権力者たちが外国勢力の圧力に屈して投降主義的政策をとり、強硬策を主張する自分を殺害しようとはかるや、六四二年一〇月、クーデターを起こして王を交替し、実権を掌握しました。

六四四年、唐が高句麗侵攻の意図をあらわにするや、彼は国防の強化を図り、他方では突厥と同盟を結んで唐の後方を脅かしました。六四五年の高句麗侵攻に失敗した唐は六四七、六四八年の両年、再び侵攻を開始しましたが、淵蓋蘇文の指揮の下に高句麗軍はこれを撃退し、その後六六〇年代初めにも、数次にわたる唐の侵略を撃退しました。

22・高句麗古墳壁画はどんな文化財ですか？

高句麗人は、死人の霊魂が生きているとする信仰心から墓の内部を生前の生活環境に似せて造営すべく天井や壁を壁画をもって装飾しました。

高句麗古墳壁画は形式が多様で、内容は非常に豊かでした。壁画には記念碑的絵画形式の中に、人物の肖像、生活風俗、風景、動物、静物、花鳥、その他装飾的及び象徴的な模様などが描かれています。

千数百年が過ぎた今も変色せず、朝鮮美術文化の優秀性を誇る高句麗古墳壁画は世界文化遺産に登録されています。(以下、次号)46