発掘:1951年2.28、3.7事件/500余人の武装警察予備隊が 東京中高を襲撃
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「東京朝鮮中高級学校10年史」に記された二つの事件
*原文は朝鮮語、■のタイトルは整理紙による。
②都立学校時代
1)都立時代のはじまり
■「四項目」をめぐり熾烈な攻防
一九四九年一〇日一九日、朝鮮人学校閉鎖の通告を受けた後にもわが中学校、高等学校では林光徹校長を中心に授業を続けていた。
民主民族教育を守るためのたたかいの結果は、一二月二〇日、東京都立に移管され、東京都教育庁から派遣された安岡富吉校長は約三〇名の日本人教員が赴任してきた。
一九五〇年一月一〇日、わが教員たちは職員会議の席上で日本人教員がなぜ私たちの学校に就任してきたのか、外国人にどんな教育を行おうとして来たのかを追求した。
わが教員たちの燃えるような民族教育に感服し、朝鮮人学校教員としての自信を失い、すぐ辞任する日本の教員もいた。
東京都教育庁では、日本教育法をそのまま適用させようとし、いわゆる四原則(四項目)を指示してきたのだ。
その内容は、第一に教育用語は日本語を使うこと、第二に民族科目の国語、歴史、地理などは課外教授とすること、第三、現在ある施設以外、拡張してはいけない、第四に朝鮮人教員は正課を教授することは出来ないなどだ。
また、朝鮮教員は都立学校の教員の資格がないとして、学級担当もできず、ただ民族科目だけを課外に教授する講師として任命した。当時、朝鮮人教員は、専任講師七名、時間講師二五名だった。
私たちはこのようなことを受け入れることは出来なかった。
わが教員と学生たちのたたかいは、私たちの国語、朝鮮歴史、朝鮮地理を正課と同じに扱わられるようになり、朝鮮教員が学級担当を担い、三学期は従来と同様の内容で授業を継続した。
しかし、四月新学年度からは、都教育庁は四原則の実施を指示してきた。教育庁が要求する条項が無理であることを徐々に知ることになった日本人教師たちは私たちの要求に協力し、四項目の実施がでないようにし、一九五四年三月、都立廃止まで実質的に民族教育に支障なく行われてきたのである。
■国語実力の低下など、様々な欠陥も
しかし、私たちが志向している民族教育の観点からみると、避けられない様々な欠陥をもたらせた。意識水準が低い学生は私たちの言葉より日本語を常用するようになり、国語の実力の低下が明らかになるようになった。しかし、その反面、国際主義的連帯性は一層発展するようになった。
2)2.28と3.7事件
■2月28日―早朝に寐こみを襲う
このような中で、一九五〇年六月二五日には、祖国解放戦争が勃発した。
私たちは米帝に対する燃えるような憎悪と敵愾心を抱き、祖国の自由と独立、平和を守護する聖戦の勝利のために、米日反動と対決し熾烈にたたかうことによって、愛国主義思想を一層高揚させた。
米帝と日本反動政府は日本の民主勢力を野獣的に弾圧し、私たちの学校の民主民族教育を抹殺しようと狂奔した。
一九五一年二月二八日の早朝、突然武装した警察予備隊約五〇〇名と私服刑事たちが土足で学生が寝入っている寄宿舎、きれいに整頓していた校舎を襲撃とありとあらゆる醜悪な方法で捜索し図画、作文、その他教材を無断で押収していった。
高等学校の学生の一人が反戦(米帝は朝鮮から手を引け)のビラを持っていて、川崎付近で捕らえられたが、校内に秘密印刷所があると、襲撃したという。わが校には印刷所があるはずがなく、戦争反対のビラに対するこのような弾圧は、日本警察の本質がどこにあるのかを如実に示している。
■3月7日―こん棒で乱打、足蹴に
学父母たちはこの事件に対して三月七日、学父兄総会を開いたが、日本警察当局はこの会合が届け出がない集会だとして、約五〇〇名の警察予備隊を動員して学校を包囲した。学父兄会は、すでに終わっており、2・28事件に対する抗議をしに行った後にもかかわらず、まだ会議を行なっているとか、拳銃がなくなったという口実で、捜索すると校門内になだれ込んできた。
愛校心に燃える学生たちは誇らしい学園を踏みにじるこのような輩を防ごうとしたが、警察はこん棒で、素手の幼い学生を乱打し、手当り次第に蹴り殴りかかった。
この惨状を目撃したものは誰もが憤激した。悲憤に満ちた学生と教員たちは歌声も高く、学校を死守するために、民族教育を血で守るために、愛する学友を守るために正義を武器にたたかった。
敵への恨みの声は、勝利を予告するたたかいの足音と栄光の高らかな歌声は東京を振動させた。ああ、どんなに誇らしく、美しい青春の姿なのか!
しかし、奴らの野獣のような蛮行によって、生命が脅かされた重傷者が二三名、軽症が約二〇〇名に達した。
■警察隊の蛮行に日本人教師も憤激
警官たちの暴力を防ごうと立ちあがった教員たちに対しても容赦なく暴行は加えられた。また、警官たちの蛮行がいかに酷かったのか、私たちの教育にさほど理解を持っていなかった日本の教員櫻木谷先生が耐えられず、学生たちを救おうとして警官に殴打され、一〇日余り学校を休んだという事実だけみても、その酷さを想像することができる。また、この場面を撮ろうとした日本ニュースのカメラマンすら重傷を負った。
私たちはこの事件を通じて、米帝と日本政府が平和と民主を反対する侵略勢力であることが分かり、また警官たちの正体もよく分かった。
この事件を機に、わが校内の団結は一層強固なものになり、私たちの事業の正当性を正しく認識し、支持と声援の手を差し伸べる日本人民たちも少なくなかった。
*「復刻版・東京朝鮮中・高級学校10年史(1946~56)」より転載。次号は、二つの事件にふれた「東京都立朝鮮学校教職員組合のアピール文」を掲載します。
500余人の武装警察予備隊が学校襲撃
資 料 ・民族教育権関連年表 -朝鮮学校を中心に-㊤
1945.09 | 在日朝鮮人の民族教育、「国語講習所」の形態で始まる。 |
---|---|
1948.01.24 | 文部省学校教育局長、「朝鮮人設立学校の取扱について」(朝鮮人学校の閉鎖を求める内容)を各都道府県知事に通達 |
1948.04.24 | 4・24教育闘争 |
1949.09.08 | 在日本朝鮮人連盟(1945.10.15結成)解散命令 |
1949.10.19 | 朝鮮人学校閉鎖命令 |
1953.05.18 | 京都府、朝鮮学校を各種学校として認可(以降、他府県も認可していき、1975年には全国で認可される) |
1955.04 | 東京都、朝鮮人学校を各種学校として認可 |
1965.12.28 | 文部省事務次官通達 -「朝鮮人のみを収容する教育施設の取り扱いについて」 -「日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定における教育関係事項の実施について」 |
1967~72 | 外国人学校法案策動 |
1968.04.17 | 朝鮮大学校が法人認可獲得 |
1989 | 日本放送協会主催のNHK合唱コンクールへの朝鮮学校の正式参加が認定される。 |
1991.03 | 全国高等学校野球部連盟(高野連)、外国人学校の高校野球大会への参加承認。 |
1992.10 | 高体連(全国高校体育連盟)問題、日弁連が人権侵害だとして、是正を勧告 |
1994.03 | 高体連、各種学校にも同連盟主催の大会参加承認を決定。 |
1994.04 | JR各社、通学定期運賃の割引率格差を是正。1条校と専修学校、各種学校との格差がなくなる。 |
1969.09 | 川崎市立看護短期大学が朝鮮高級学校卒業生の受験資格認定を決定。これを前後にして、大阪府立看護大、大阪府立医療技術短大、広島県立保健福祉大も認定したことが判明。この後、京都府立医療科大学医療技術短大、京都市立看護短大も1998年入学生より認定。 |
1997 | 全国中学校体育連盟(中連盟)主催の大会にも朝鮮学校生の参加が可能となる。 |
1997.04 | 大阪府の教育関係者、父母、生徒代表、民族教育の差別是正要求の20万人署名を小杉隆文部大臣に直接手渡す。 |
1998.02 | 朝鮮人学校の資格助成問題に関する日弁連勧告。内閣総理大臣、文部大臣あてに、重大な人権侵害だと是正を勧告、衆参国会議長、国公私立大学長に是正要望書提出。 |
1998.06 | 国連子どもの権利条約委員会、処遇差別是正を日本政府に勧告 |
1998.08 | 京都大学大学院理学研究科、朝鮮大学校卒業生の受験認める(京大大学院ではこれに続き、教育学研究科、経済学研究科、文学研究科、法学研究科、人間・境研究科が門戸開放を打ち出す)。 |
1998.09 | 朝鮮大学校卒業生、京大大学院理学研究科合格 |
1998.11 | 国連自由規約委員会、朝鮮学校待遇について日本政府に対し懸念表明 |
1999.01 | 九州大学大学院・比較社会文化研究科が朝鮮大学校卒業生の受験を認める |
1999.07.08 | 外国人大学の卒業生に対する大学院への受験資格認定、及び、大学受験資格格要件の緩和による外国人中学校卒業生に対する大検受験資格認定の方針が出される。 |
2000.12 | 全国高等学校サッカー選手権大会に、大阪府代表として大阪朝高初参加 |
2001.03 | 人種差別撤廃条約委員会、受験資格、チマチョゴリ事件等について勧告 |
2001.08 | 社会権規約委員会、公的助成、受験資格等の差別是正を勧告 |
2002.04 | 大学入試センター試験の外国語科目として、英、仏、独、中の他に朝鮮語を設ける。 |
2002.09.17 | 朝日首脳会談、ピョンヤン宣言発表、在日朝鮮人の地位に関する問題を国交正常化交渉において誠実に協議する事を宣言 |
2003.03 | 文科省、外国人学校中、欧米系学校を設置している法人だけ「特定公益増進法人」として認可。税制優遇を図る。 |
2003.02~07 | 国立大学受験資格を求める要請、署名運動広まる。 |
2003.09 | 外国人学校、民族教育を支える全国連絡会結成 文科省『学校教育施行規則の一部改正等について』各国公私立大学、都道府県教育委員会に通知 |
2003.09.19 | 国立大学入学資格の弾力化〃の対象となるカテゴリ3つに分岐 外国人学校のうち、朝鮮学校のみ学校単位で認めず個別審査を対象とする新たな民族差別を強化。 |
*出所・第19回日朝教育シンポジウムで配布された資料集・以下次号
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