平壌から「今」を伝える #第36信(2018.8.23)
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金圭蘭:第36信(2018.8.23)
整理者:筆者の金圭蘭[東京朝鮮第三初級学校18期・東京朝鮮中高級学校21期卒業生]は、編者・金日宇の妹である。朝鮮大学校の工学部機械科に在学中の1972年春に帰国した。
長年住み慣れたアパートの建て替えのため、仮住まいで長女夫婦と一緒に暮らしている。近く、新築のアパートへ転居するようだ。
原文は大方日本語で、一部単語は朝鮮語。書き手のニュアンスをそのまま伝えるため、誤字、脱字だけを直した。文中[ ]内と注釈は、整理者が付けくわえた。 (「記録する会」 キム・イルウ)
オモニ、オッパ[兄さん]、オルケ[兄嫁]お元気ですか?
七月の中旬から暑い毎日が続いています。八月に入って、一日と二日は、平壌で三八℃まで上がり、江堺など、中部地方では四〇℃を越えました。
家の中でも三五℃。電気が来ると、必死で扇風機を回し、でも暖かい風に…。
以前は、水に浸したタオルを肩にかけておけば涼しいと思っていたのですがこの頃は何分もすると、タオルが温かくなってダメです。
チュウォニとチュヨンイ[長女ウナの長男と次男]は夏休み。チュウォニは学校で、数学クラブに通っているので、私の手から離れたものの、チュヨンイは一日中、私と留守番。午後になると、我慢できず、近くのプール(昔の赤羽プールみたいなところ)で、一~二時間水につかってきました。
ここ船橋区域の水は、中区域と同じく地下水のようで、凄く冷たく、プールの水も冷たく、しばらくすると寒いくらいで、唇が真っ青になる程。それでも子どもたちは時間のたつのも忘れ、夢中で遊んでいます。幼い子どもが多く、たまに水泳教室、水泳の試験を控えた「熱誠父母」たちが子どもの手をひいて、教えています。この頃は、近くの職場の人たちも時間をみはからって、水に入って体を冷ましているようです。
通りがかりの労働者たちも、どこか「動員」に行った帰りか、七~八人が入ってきました。
四日に一回、水を入れ替えます。朝から水をぬくと、夕方ごろには子どもの膝あたりに、翌日に水を入れます。
あまりに水が冷たく、そこのサウナに入って家に帰るのですが、家に着く前に汗、汗だく…それで売店に寄ってソフトクリームを…。
この暑い夏、あまりに暑くて一晩中扇風機の前で、男たちはアパートの下に降りて、地べたに段ボールをひいて…。
三伏の暑さは大変。夏一番、暑い日ですから。夏至が過ぎて三回目の庚日は初伏、四回目の庚日が中伏、立秋から初めの庚日が末伏で、今年は、七月一六日が初伏で、二六日が中伏、八月一六日が末伏、猛暑が続いています。ある人は、余りの暑さにカエルも地面に腹を当てているので「三伏の暑さ」なんですって…。そしてその日は、단고기국を食べるようです。
暑さには熱で…。汗をたくさん流すから단고기(タンコギ)を食べ、補身もして、病にも勝ち、暑さにも負けないということのようです。日本での土用のウナギも、これと同じものでしょう。
土用の日、赤羽一番街に入ると、ウナギを焼くにおいが漂っていたように、ここでも食堂はこぞって단고기、面専門店にも「단고기奉仕します」の看板が立つほどです。
ここの人は皆、단고기が大好きです。昔、五〇年ぐらい前までは개장(ケジャン)と言っていたようです。食堂に개장とは書けず…。金日成大元帥が개장は皆大好物なのだから…단고기(甘い肉の意)にしようと、他の肉と比べて甘さがあるというので단고기と呼ぶようになりました。
私が中学[東京朝鮮中高級学校]に入学してすぐ、運動場で朝礼をしていると、一匹の犬が入ってきて、近づいてきたので怖いと思っていたら、上級生の高校生が「美味しそうなのが来たな…」と、犬が逃げて行ったことを覚えています。犬を食べることを初めて知りました。
一九七八年ごろだと思います。帰国していた兄の家に遊びに行った時、ここの단고기がとても美味しいと、兄嫁が買ってきました。兄とホヨントンム[キュラニの連れ合い]は美味しそうに食べ始めました。兄嫁が私にもよそってくれましたが、こわくて口を付けられませんでした。それでも卵を入れてくれたので…無理して食べましたが、美味しい…完食しました。
その後、大好物になり、あくる年からは生肉を買ってきて、自分で料理をするようになりました。
アボジも大好物でした。祖国に来ると、私の家でも、兄の家でも犬料理は欠かせませんでした。故郷の咸鏡北道・北青に行って、二日も三日も、朝昼晩ともそれを食べていました。私も二度ほど、ついて行きました。毎食、食べていたので、「もう言葉はいらない、何でもワンてしょ」と言ったら、「そうだな、よく食べたワンワン!」と応えていました。
今年は初伏、中伏には食べられませんでした。婿が出張だったからです。末伏には、大きなお釜でぐずぐず煮込んで食べなくちゃ。
この頃食堂には、「今日は×伏の日です。단고기奉仕します」だけではなく、「美味しい各種補身湯奉仕します」との看板が立ちます。ここでも食べられない女性たちがいて、단고기だけではなく、鶏やアヒルの補身湯をメニューに上げている店もあります。
金日成大元帥が단고기は補身にもいいと、工場、企業所内の食堂でも단고기を出すようにとの方針まで出したというのに、食べず嫌いの女性が多いようです。
私が暮らすアバートでもこの日は廊下にお釜を出して、단고기、アヒル、ウサギを煮る臭いが漂います。
三伏の暑さも、もう一歩。この暑さが過ぎるとすぐ、寒い寒い三凍(冬)の寒さが…。今年は何度まで下がる? 私の家とテハとチハ[キュラニの長男と次男]の家でも冬支度、練炭六〇〇個を買って来ました。
今は、この暑さが過ぎるのを待つだけです。暑さの中でも、共和国創建七〇周年行事の準備のニュース、閲兵式に、集団体操、たいまつ行進、群衆舞踊…大変です。
日本も猛暑が続いているようです。オモニは大丈夫ですか? 家の中で日射病? そんなことありえないと思っていましたが、家の中で三五℃を体験すると、あり得ます。
とにかく暑い日々、みながんばってきりぬけましょう。
八月一一日はオモニの誕生日ですね。婿が出張先の鴨綠江の川辺で採った四つ葉のクローバーを贈ります。
船橋水泳場で撮った写真二枚同封します。
二〇一八・八・二三
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