福岡地裁:不当判決からのはじまり
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金日宇・編集部
本号の締め切りが迫り、表紙に「福岡・大阪地裁につづく勝訴」の仮タイトルを入れて、裁判当日、福岡入りした。
三日前の一一日、九州のウリハッキョの最寄り駅・折尾駅頭で、たくさんの警察官の前で通学する女子生徒に向かって、「朝鮮に帰れ」との暴言が浴びせられるという事件が起きている。
立ちはだかる壁は厚かった。
◇
福岡地裁小倉支部。建物の廊下を超え、中庭にまで傍聴券を求める長い列ができた。781番から1100番までの整理券が配られ、傍聴できたのは三七人。建物の外に出て、「吉報」を待つ。
新幹線で現地入りした東京の顔なじみのオモニ会のメンバーが、大きなカメラを向けて待ち構える報道陣の隣、ベストポジションにいる。「月刊イオ」の表紙を飾った大阪のオモニ会のメンバーや、東京や大阪での裁判所でも会っているソウルからの支援者たちも、日の丸がはためく裁判所の建物の入り口を、心を一つにして見つめている。試験を終えて駆け付けた九州中高生たちの姿も。英文のプリントを片手にした生徒、翌日も試験だ。
二時の開廷から間もなく、「不当判決」の四文字。声が出ない。重い沈黙、とても長く感じられた。
「どれだけいじめればいいのか」、「恥を知れ」、「子どもたちを泣かすな」
第一声を発したのは、朝鮮なまりの二世の高齢男性だ。
「最後まで戦うぞ」、「子どもたちの学ぶ権利を奪うな」
「朝鮮学校差別反対」のパネルを掲げ、オモニ会が拳を振り上げた。
「조선학교 차별반대(朝鮮学校差別反対)」、「무상화 적용하라(無償化適用せよ)」
駐韓日本大使館前での「金曜行動」のときと同じシュプレヒコールをソウルから来た支援者らが叫ぶ。
♪どれだけ叫べばいいのだろう
奪われ続けた声がある
東京のオモニ会のメンバーが、毎週文科省前でうたっている歌をうたう。地元の同胞社会の「語り部」をしている同胞が「アリラン」をうたいだすと、大きな歌声になり、地裁の建物を覆った。
「(解放後)何年も何年も戦ってきた。…筑豊の土にはまだ同胞の骨が…いつまでいじめるのか…」
第一声を発した同胞が声を振り絞って、叫び続ける。怒りは収まらない。
中高生たちが陣取る方向から「差別するな」、「奪うな」、そして「諦めない」の絶叫が聞こえる。留学同のメンバーだ。生徒たちは泣いている。抗議の強い意思からなのか、涙を拭おうともしないで、マスコミのカメラをしっかり見つめている。先ほどまで、カバンに付けた韓国の人気グループのバッジについて楽しそうに話してくれていた生徒たちだ。心が痛んだ。
記者会見につづき、夕方からの報告集会にも立ち見が出るほどの人が詰めかけた。
担当弁護士からは「端的に不誠実…とても空虚…」、「できの悪い、ろくでもない」との評だ。各地の支援団体らの連帯のあいさつ、アピールは、「怒り」や「悔しさ」というより、ウリハッセンへ(生徒)への気遣いと励まし、ウリハッキョ(朝鮮学校)への誇りで満ち、「ウリハッキョ チョアヨ(朝鮮学校いいね)」、「チキジャ(守ろう)」の輪が着実に広まっていることを実感させる、温かいものだった。
翌日、九州朝鮮中高級学校に行った。在特会が女子高生に暴言を吐いたという現場は、学校の目と鼻の先だ。
学校のホールには、報告会の公演で掲げた「朝鮮学校守ろう 最後まで未来のために」というポスターがオモニ会の「檄文」と並んで貼られていた。勝訴にも備えていたのかと思うと、やりきれなかった。
終わりの見えない戦いが続く。諦めないで戦う、負けるはずがない。54
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