第11回セッピョル学園・初中高級学校の特性生かし進化続ける
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金淑子・編集部
【6月15~16日】
二、三日目のセッピョル学園を訪ねた。茨城、群馬、栃木、福島、東北、北海道のウリハッキョ児童生徒が茨城ハッキョに集合して二泊三日で開講されるセッピョル学園が、一一回目を迎えた。主人公は初級部一年生から中級部三年生の児童生徒たち。北海道と茨城の高級部生は彼らが楽しめるように徹底してサポートする。
寄宿舎を備えた初中高級学校の特性を生かしたこの企画。青商会やオモニ会、そして現場の先生たちの献身的な努力に支えられ、一〇年という歳月を通じて、子どもたちの成長に不可欠な教育課程として定着していることを実感した二日間だった。
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一日目開園式の後、低学年を対象に、韓国の折り紙文化財団の方が折り紙教室を開催。子どもたちが言葉もなしに一心に紙を折るので、「言葉が通じていないのでは」と教える人が心配するほどだったという。面白かったのか、その後も休み時間に折り紙をする児童たちの姿があちこちで見られた。
〈二日目午前〉
ハッキョ[学校]に着くと各教室で授業が行われていた。
グループで話し合ったり作業をしたり…。教室のざわめき具合がいい。中学二年生の教室では重曹を使った電気パン作り。バターを作ったり、ホイップをたてたり、どの班のパンがおいしいか競争していた。
この間高級部生たちは「6.15 統一ケーキコンテスト」をして自分たちも楽しんでいた。
チェジュ島のみかんや韓国企業のロッテコアラのマーチをあしらって南北協力を象徴したり、チョコ入り風船を割って、統一の祝砲をアレンジしたり…。
きれいにデコレーションしたケーキの中に無造作に果物を入れて、「アメリカの裏表」を表し、そんな下心には惑わされずに自主統一を成し遂げるのだというプレゼンには爆笑が起こった。
「『アメリカの下心』を食いつぶさなくては」と言いながら食べた甘い果実は、確かに美味だった。でも後のカロリーオーバーが怖い! 朝高生の考えの深さに納得だ。
昼食に、食堂でオモニたちが準備した冷やし中華をいただいた後は、休憩。この日はあいにくの雨模様だったが、今夜の公演準備をしたり、LEGOで遊んだり…、校舎には笑い声が響いた。
〈午後〉
午後は運動会、一年生のおぼつかない行進と、高級部生たちの力いっぱいの足音で始まった競技は、どれも真剣勝負だ、体育館が笑いと熱気にあふれた。
夕飯は恒例の焼き肉。雨天のため青商会メンバーや保護者が体育館前に張ったテントの下で焼いた肉を配ることになった。雨の中、テントを張って火をおこし、煙の中で焼き肉を焼く男性たち、体育館にブルーシートを敷く先生たち、一方オモニたちは食堂でキムチを詰めてトウモロコシをゆで、デザートのパイナップルを分け、温かいご飯をパックに詰めて体育館に運ぶ。
準備が整うと、「乾杯のあいさつを○○〇トンムが行います」のアナウンス。焼き肉前の「乾杯のあいさつ」は在日朝鮮人社会の流儀。初級部一年生が缶のお茶をもって備えている姿がほほえましい。「チュッペ!」の後、一斉にご飯のパックに山盛りになった焼き肉にかぶりつく。初級部一年生に「これ全部食べられるの?」と聞くと、もちろんと言わんばかりに頭を縦にふる。「雰囲気もあるので、平らげると思います」と先生が笑顔で答えていた。
食べ終えて先生たちと話していると、高級部生徒たちが早々と後片づけを始めた。夜の文化公演が待っていた。
〈夜〉
運動会に次ぐ学園のクライマックスは、高級部生の演劇。生徒たちはこの日のために案を練り、練習を重ねる。今年のストーリーは、悩んだ生徒がインドを訪れ、そこで偶然会った茨城朝高卒業の青商会メンバーに二度だけ願いが叶う魔法を授けられ、助けられるという話。生徒たちにとって青商会は、困ったときに頼りになる存在なのだろう。
ウリマルを習って二か月余りの初級部一年生が、身を乗り出して、笑いこける。高級部生はこの間、児童生徒を楽しませる役者であり、見守り役であり、骨身を惜しまず走り回るスタッフでもある。セッピョル学園はそういう人材を育んできた。
〈三日目〉
最終日は「セッピョルアドベンチャー」。初一から中二の児童生徒が、一二組に分かれて「写真館」「歴史資料館」「セッピョルバックス(ドリンクコーナー)」「お化け屋敷」の四つのブースをめぐる。廊下のあちこちにクイズマンが立っていて、答えるとポイントをもらえる。ポケモンがあちこちに隠されていて、これも見つけるとポイントがもらえる。廊下や教室に児童生徒たちの話し声や笑い声、たまに叫び声があふれた。
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今回、セッピョル学園に行って感じたのは、まず児童、生徒がウリマルをよく使う。
日本語で何か尋ねてもウリマルで答えが返ってくる。友だち同士でふざけあうのもウリマル。
そして上級生が下級生の面倒をよく見る。一緒に遊ぶだけでなく、目配りがすごい。駐車場で見送りの時には、高三が群馬の少年団委員長を胴上げしていた。
最後に高級部と中三生徒の企画力がすごい!
三日目の企画で、セッピョル学園の歴史説明なんて、初級部低学年は退屈じゃないの? と思いきや、短くわかりやすくまとめられていて、最後に一緒に「キルトンム」や「セッピョル」を叫ぶなど、退屈させない気遣いが。 順番待ちの間にクイズに答え、ポケモンを探すなど、あちこちに面白い企画が散りばめられていた。
二日目夜の演劇も初一から中三まで、食いつくように見入って、爆笑していた。
楽しませてくれた先輩たちの背中を見ながら、どんどん進化するセッピョル学園の児童、生徒たち。かっこよすぎて、ステキすぎて、二日間、ずっと笑っていたような気がする。
「セッピョル、最高!」
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