会って、話して、理解しあえる社会を目指して
スポンサードリンク
スポンサードリンク
インタビューを終えて
金淑子・「記録する会」
九月一〇日土曜日夕方、セッパラム文庫にお邪魔した。鶴橋からグーグルマップを頼りに木造民家が並ぶ路地を歩いていると、一軒家の前に置かれた「飛び出しトンム」の人形が「ここですよ」と教えてくれた。
インタビューをお願いしたきっかけは、こうのすけさんが送ってくださった「朝鮮韓国在日間アンケート集計結果」を目にしたことだった。日本人と在日朝鮮人の関係は良くなっているのだろうか? と話していた矢先だった。
日本人の子どもを朝鮮学校に受け入れてはどうかというのは、思いがけない提案だった。インタビューの後、朝鮮学校や在日朝鮮人コミュニティはそんなに閉鎖的なのだろうかと心の中で何度も問い返してみた。
朝鮮学校は、公開授業を実施して学芸会やバザーも公開している。カリキュラムも公開し公開授業の時には教科書も展示して自由に見てもらっている。一九九〇年代にはチマリョゴリを着た女子生徒が襲われ、二〇〇〇年以降も京都第一初級への襲撃事件があった。子どもたちの安全の為には警戒を怠ってはいけないが、それ以上に地域の学校として根付くことの大切さを実感している。正直、これほど公開している学校が他にあるだろうかと思う。カリキュラムに余裕があるわけではないが、根強い民族差別や歴史問題、北朝鮮バッシングなどによって作り出された「反日教育をする学校」というような既成概念を払拭するためにはやむを得ない。今の朝鮮学校の教育が「歴史修正主義者や極右のみなさんが『反日』教育といっている、揚げ足を取られそうなモノ」でないことは公開されている教科書を見てもらえば一目瞭然だ。
在日朝鮮人は、障害者のケースとは違う。在日朝鮮人は、日本の学校で、隣同士で学びながら、朝鮮人の部分を消すことこそが生きる術だと学び、自ら打ち消そうと葛藤するのだ。それは想像以上に屈辱的だ。そんな子どもたちにとって、在日朝鮮人として生まれてきたことを肯定してくれる唯一の場が朝鮮学校だ。創立以来七〇年以上、朝鮮学校はそのために存在してきた。朝鮮学校の教育の核は、、朝鮮語と歴史教育、そして同じルーツをもつ同年代のともだちとの価値観の共有だ。卒業後も移り変わる社会の中で、その都度自分たちの立ち位置を確認する、それが在日朝鮮人コミュニティである。
朝鮮学校の児童・生徒の減少が深刻化する中、他の外国人学校のように日本人を受け入れればよいという意見をたまに聞く。しかし朝鮮学校は、朝鮮語を教える為の学校ではなく、在日朝鮮人のアイデンティティを育てるために朝鮮語と歴史を教え、人間関係を築くための学校である。そこに日本人を受け入れると言うことは、朝鮮学校の存在目的を根底から覆すことになる。東アジアの交流が盛んになり、歴史を共有する時代が来れば東アジア人としてのアイデンティティを育てる時代が来るかも知れないが、それは今ではない。
こうのすけさんは、大学生の頃に生身の在日朝鮮人に初めて出会い「かわいそうやな」「気の毒やな」という同情心が消え、「お前、俺になんか悪いことしたんか」と言われて、自己紹介で日本人であることを謝まるのをやめた、という。私たち在日朝鮮人が望む日本人との関係は、日本人個人に謝られることでもなければ、哀れまれることでもない。少し違う角度から社会を見つめ、少し違う文化を持つ存在として対等であることだ。
今回のインタビューの後、私たちの運動は知らない間に内向きになってはいないかと、心の中で何度も問いただし、朝鮮学校の存在理由についてもう一度考えてみた。そしてめまぐるしく移り変わる社会の中で、朝鮮学校のある風景をしっかりと見つめるためには、朝鮮学校を大切に考えてくれる人々の貴重な意見に耳を傾けて、自分なりの考えを整理する作業を繰り返して行かなくてはいけないと思った。(2016・9・20)
スポンサードリンク
ご案内・みんなのまちの人権図書館「猪飼野セッパラム文庫」
〒543-0032 大阪市天王寺区細工谷2-14-8
近鉄「大阪上本町駅」から8分/地下鉄「谷町九丁目駅」、JR環状線「桃谷駅」から10分/JR環状線・地下鉄・近鉄「鶴橋駅」から15分
□開館:土曜日13:00~15:00これ以外のご利用も対応可
□入館・閲覧無料 どなたでもご利用いただけます。来館前にご連絡いただければ幸いです。masipon@nifty.com ☎090-9882-1663(藤井幸之助)
○蔵書案内(編著者名を50音順で配架)
所蔵資料(日本語・朝鮮語・漢語)書籍・雑誌・チラシ・パンフレット・テープ・CD・DVD・ビデオ(未整理のもの多数)・民族団体・民族学校・運動団体関連資料・行政外国人施策関連資料・民族まつり/マダン関連資料・モノ
○調査相談(レファレンス)サービス:朝鮮韓国在日についての本や資料の相談
○関連論文・卒業論文・修士論文・博士論文の収集
○チラシ・パンフレットの収集・データベース化
○「猪飼野アクセスマップ」(『季刊Sai』vol.3 1992年掲載)の改訂作業
○会員登録
年会費:個人会員6000円/一口会員1000円(何口でも)/高・大生会員無料/維持会員1万円
特典:貸出・会員限定。何冊でも可能な冊数・2週間/ニュース発行/関連事業参加費の割引/「これからの催し」配信
○各種講座・催しの開催
コリアン・マイノリティ研究会・「映像で見る朝鮮韓国在日」上映会・朝鮮語=韓国語講座・猪飼野セミナー・ワークショップ・フィールドトリップ・講師派遣・会議貸室・宿泊可ほか
○情報満載「朝鮮韓国在日・これからの催し」 毎週月・木2回mail配信。お申し込みは、masipon@nifty.com
○そのほか、書籍委託販売・古本販売・グッズ販売